慶大など漢方治療の効果 分析へ、自然と健康を科学する漢方?

慶大など漢方治療の効果 分析へ

以下は、記事の抜粋です。


医師の経験に頼る部分が大きい漢方治療で、コンピューターを使い、診療の参考になる客観的なデータを蓄えることを目指す研究を6大学病院などで作る厚生労働省研究班が今年度から始めた。

今後3年で受診する患者のデータをコンピューターで分析し、漢方薬がどんな人によく効くのかを探り出す。将来は、患者の症状を入力すると、治療に適した漢方薬を教えてくれるソフトウエアの開発も目指している。期間は、2012年度までの3か年。

データの収集には、患者がパソコン画面に触れて入力する漢方問診システムを使用。質問数は約150。冷え、痛み、ほてり、むくみの程度や、「イライラ」「憂うつ」の精神状態、「のどのつかえ」「胸焼け」など体の異状を尋ねる。

こうして収集されたデータを、東大医科学研究所教授の宮野悟さん、東大工学部特任准教授の美馬さんら情報技術の専門家が分析。患者の年齢、性別、体質、症状と、漢方による改善度との関係を調べる。

共同研究に先立って、慶大では08年度から2年間、漢方問診システムで約5000件のデータを収集。漢方治療で患者が多い「冷え」について分析したところ、「むくみがある」「疲れやすい」などの症状もある「冷え」の患者は漢方薬で治りやすいが、にきびがあったり、汗をかきやすかったりする患者では、漢方では改善しにくいことが新たに分かった。

同大病院漢方医学センター長の渡辺賢治さんは「延べ3万人のデータ収集が目標。大量のデータ分析によって、漢方薬ごとの効果予測も可能になるかもしれない」と期待する。

伝統的な漢方治療では、医師が患者の脈、舌、腹部を診て、体力の程度や血流の様子に応じ、漢方薬を処方している。臨床試験で治療の効果を比較する西洋医学に比べ、科学的な根拠が弱いと指摘されている。


今年3月、漢方・鍼灸の活用を検討してきた厚生労働科学研究班(班長:黒岩国際医療福祉大教授)が、漢方・鍼灸の科学的なエビデンス確立を打ち出し、EBMへの転換を図るよう提言したそうです(記事をみる)。

しかし、上の記事で紹介された「効果の分析」は、無作為化比較臨床試験で有効性を実証するような「EBMへの転換」にはほど遠いものに思われます。

記事では「『むくみがある』『疲れやすい』などの症状もある『冷え』の患者は漢方薬で治りやすい」とありますが、どんな結果を根拠にこんな結論が得られたのでしょうか?そもそも、日本で使用されている漢方薬で「効く」エビデンスのあるものは皆無のはずです。

日本で使われている医療用漢方薬147種類はすべて、特例として臨床試験(治験)を経ずに承認されています。

ツムラは、慢性腎不全に用いる「温脾湯」の新規承認をめざし、通常の新薬と同様の第Ⅱ相臨床試験を1999年から実施しましたが、良い結果が得られず、2003年に開発は中止されました。これ以降、漢方の新薬はありません。つまり、科学的に「効く」エビデンスがある漢方薬は、今のところ日本にはありません。

提言で指摘されたように、生薬原料の9割近くを輸入に頼り、標準化が遅れている現状では、同じ名前の漢方薬でも同じ成分である保障はありません。この点では、健康食品のほうがまだマシです。

漢方薬については、「EBM」とか「科学的な根拠」を唱える研究は行われても、科学からほど遠いのが現状です。漢方研究者は当然ですが、漢方メーカーも「自然と健康を科学する」姿勢を貫いて欲しいと思います。

参考記事
漢方薬の保険適用除外と混合診療

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