強力な臨床効果を持つC型肝炎NS5A阻害薬のケミカル・ジェネティクスによる発見

Chemical genetics strategy identifies an HCV NS5A inhibitor with a potent clinical effect
以下は、論文の要約です。


慢性C型肝炎(HCV)感染者数は、2億人に達しつつある。現在の治療は、ペグ化インターフェロンαとリバビリンの組み合わせに頼っているが、この投薬は耐容性が低く、遺伝型1型に感染している患者の場合、持続的ウイルス応答は、50%以下である。

HCV治療のために直接作用する抗ウイルス薬の開発は、NS3プロテアーゼとNS5BRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害薬に集中してきた。

本論文では、NS5Aタンパク質の低分子阻害薬BMS-790052について報告する。BMS-790052は、培養細胞で幅広いHCV遺伝型とJFH-1遺伝型2aの感染性ウイルスを発現するレプリコンに対して、ピコモルレベルのEC50を示す。

慢性HCV感染患者における第I相臨床試験では、100 mgのBMS-790052の1回投与により、投与後24時間の平均ウイルス量が1000分の1以下に減少した。この減少は遺伝型1bのウイルスに感染した2人の患者では、さらに120時間持続した。

投与前、投与後24時間、144時間に採取されたサンプルの遺伝型解析によって、主な変異型HCVは、ビトロのレプリコン系で同定されたアミノ酸置換をもつことが明らかになった。

これらの結果から、酵素機能を持たないHCV NS5Aタンパク質の阻害薬が臨床的に有効であることが証明され、ウイルス複製抑制を目的として、HCV阻害薬を組み合わせた薬物療法の一部となる可能性がでてきた。


この新薬発見のアプローチがおもしろいのは、研究者らがウイルスの複製は抑制するけれども、、NS3プロテアーゼ、NS3ヘリカーゼやNS5BRNA依存性RNAポリメラーゼの酵素活性を抑制しない化合物を探したことです。

そして、この化合物に対して抵抗性をもつウイルスの遺伝子を解析した結果、NS5Aのコード部分に共通の変異が発見されて、NS5Aタンパク質が標的分子であることがわかりました。

BMS-790052は、NS5Aのダイマー形成を阻害することでウイルス複製を抑制すると考えられています。臨床試験では、200mg投与でも目立った副作用は認められず、問題になりそうな耐性ウイルスにも十分有効であること、耐性ウイルスの生物活性は低いと予想されることなど、非常に期待が持てる結果でした。

この論文も含めて、新しいHCV治療薬に関する良いニュースが最近多いような気がします。患者数も頭打ち傾向ですので、研究者にとっては逆に厳しい状況だと思います。

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BMS-790052のまとめ

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