医学文献で蔓延する報告バイアス

Reporting bias widespread in medical literature

以下は、紹介文の訳です。


出版された研究や臨床試験の結果に基いて治療判断・方針決定を行う者にとって、臨床試験で都合の良い結果だけが選ばれて報告されることは大きな問題である。

先週(4月13日)、Trial誌に掲載された総説でMcGuaranらは、出版におけるバイアス(ネガティブな結果あるは結論の出ない研究結果を公表しない)と結果報告におけるバイアス(特定の結果を公表研究として報告しない)が医学文献において蔓延していると指摘した。


総説のタイトルは、”Reporting bias in medical research – a narrative review.”です(総説をみる)。

総説によると、臨床試験における報告バイアスとしては、抗うつ薬、クラスⅠ抗不整脈薬、特異的COX-2阻害薬などの例が良く知られていました。医学文献における報告バイアスの全体像を掴むため、上記の有名な3例以外に、どの程度この問題が普遍的かを知るために、他分野での報告バイアスの例を調べたそうです。

その結果、約50種類の治療法について40件の事例がありました。薬物の臨床試験での事例が多いですが、外科手術法、除細動機や超音波診断法などにも報告バイアスの存在が確認されました。以下に、薬物関係のものを紹介します。

精神神経(Paroxetine, Reboxetine, Mirtazapine, Lamotrigine, Gabapentin, Quetiapine, Rofecoxib)、痛み(Valdecoxib, Gabapentin)、循環器(Aprotinin, Class I anti-arrhythmic drugs, Nesiritide)、消化器(Prostaglandin analogues, Alosetron)、泌尿器(Duloxetine)、関節炎(Rofecoxib, Celecoxib)、代謝・内分泌(Rosiglitazone, Metformin, Muraglitazar, Ezetimibe, Simvastatin, Cerivastatin, Levothyroxine, Tibolone)、腫瘍(Combination chemotherapy)、感染症(Telithromycin, Fluconazole, Oseltamivir, Fialuridine, Zidovudine, Zalcitabine, Ribavirin, Interferon, Acyclovir, Isoprinosine, Famciclovir)、その他(High-dose steroids, Human albumin, HIV-1 vaccine, がんワクチン, Quinine, 豊胸用シリコン)などです。

日本で発売されていないものも多いですが、パキシル(Paroxetine)、ガバペン(Gabapentin)、セロクエル(Quetiapine)、セレブレックス・モービック(Celecoxib)、メルビン・グリコラン(Metformin)、ゼチーア(Ezetimibe)、リポバス(Simvastatin)、チラージンS (Levothyroxine)、ケテック(Telithromycin)、ジフルカン(Fluconazole)、タミフル(Oseltamivir)などは、日本でも良く用いられる薬物です(カタカナは日本での商品名)。

バイアスの多くは、メーカーや監督官庁による研究結果の報告差し控えとメーカーによる出版の積極的な抑制です。他には、効果の過大評価や安全性リスクの過小評価が確認されました。

これらの結果から、研究者らは報告バイアスが蔓延していると結論しています。そして、この状況を変えるためには、臨床試験を行う場合は予め登録することを義務化し、得られた結果はデータベース化して、オープン化するシステムを世界規模で導入する必要があるとしています。

こうすれば、それぞれの結果の評価を独立・公正に行うことができ、患者に対する倫理的義務を果すことや治療判断おける意思決定をすべての情報を得た上で行うことができるとしています。

実験的研究についても報告バイアスがあると思いますが、バイアスを根絶することは臨床試験よりも難しそうです。

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