喫煙習慣と関連するのはニコチンの受容体と代謝酵素をコードする遺伝子、CYP2A6のおもしろい話

喫煙習慣に遺伝子の影響、英科学誌

以下は、記事の抜粋です。


喫煙習慣や喫煙への依存は、多くの場合、遺伝子によって引き起こされている――。このような結果を示す3つの研究が4月25日、Nature Genetics(電子版)で発表された。

アイスランドのゲノムデータ企業「deCODE」のKari Stefansson CEOの研究チームなどが行った研究によると、複数の染色体のDNAコードで起きる遺伝子の単独変異が、さまざまな喫煙習慣に関係していることが分かったという。

単独変異は広く知られていたが、喫煙者と非喫煙者14万人以上の遺伝子検査に基づいた研究で、第11染色体の遺伝子の変異体が喫煙の開始に強い関連性をもち、第9染色体の遺伝子の変異体が禁煙に関連性をもつことが示された。

別の研究では、第8および第19染色体をもつ人は、もっていない人に比べ、たばこを1日あたり約半箱分多く吸う傾向が強く、肺ガンにかかる可能性も10%高いことが明らかになった。

今回の研究で分かった遺伝子の変異体は、これまでに知られている喫煙依存に関連する遺伝子変異体に加えられるほか、タバコへの高い依存リスクを有する可能性のある人物を特定する診断ツールの開発にも役立つと見られている。


以下が3つの論文です。タイトルと簡単な内容です。

Genome-wide meta-analyses identify multiple loci associated with smoking behavior.
一日のタバコの本数と関連があったのは、SNPの15q25遺伝子座位で、一番強く関連があったのは、ニコチン受容体遺伝子、CHRNA3だった。喫煙の開始に最も強く関連があったのは、11番染色体のBDNF (brain-derived neurotrophic factor)で、喫煙の中止には9番染色体のDBH (dopamine beta-hydroxylase)遺伝子が最も強い関連があった。

Meta-analysis and imputation refines the association of 15q25 with smoking quantity.
喫煙量(smoking quantity)と15q25遺伝子座位との関連が明らかになった。15q25には、アセチルコリンの神経特異的ニコチニック受容体のサブユニット、CHRNA5、CHRNA3、CHRNB4をコードする3つの遺伝子を含んでいる。最も高い有意性を示したのはCHRNA5、2番目はCHRNA3だった。

Sequence variants at CHRNB3–CHRNA6 and CYP2A6 affect smoking behavior.
一日のタバコの本数と喫煙の開始と関連するSNPを調べたところ新しい関連遺伝子として、2つのニコチン代謝酵素(CYP2A6とCYP2B6)とこれまで関連を指摘されていないニコチン受容体サブユニット(CHRNB3とCHRNA6)がみつかった。


14万人を越えるメタアナリシスの結果ですが、喫煙習慣と関連するのは、ニコチンが結合する神経細胞(骨格筋のものとは異なる)特異的ニコチン受容体とニコチンを分解するシトクロムP450をコードする遺伝子だったという、何とも当たり前の結果でした。

CYP2A6について調べていて、「CYP2A6 の遺伝子多型と喫煙による発がんリスク」という北大名誉教授の鎌滝さんが書かれた非常におもしろい総説をみつけました。全文をネットで読むことができます(総説をみる)。

CYP2A6はニコチンの代謝酵素であるため、CYP2A6 の遺伝子を欠損しているヒトではニコチンの解毒が遅く、1本のたばこを吸っても、ニコチンの充足感があるので喫煙本数が少ないそうです。さらに、同じ本数のタバコを吸うヒトを比べた場合、CYP2A6 の遺伝子を欠損しているヒトでは肺がんの発症が少ない。一方、タバコを吸わないヒトでは、CYP2A6 を欠損していても肺がんの発症率は変わらないそうです。

これは、CYP2A6 がたばこの煙や噛みたばこに含まれるニトロソアミン類を発がん物質に代謝するので、CYP2A6遺伝子を欠損しているヒトでは発がんリスクが少ないためだそうです。

これらの結果は、鎌滝さんらによって10年以上も前に報告されています。鎌滝さんは、タバコと肺がんだけではなく、噛みタバコと口腔がんの関係を調べるために噛みタバコの常習者が多いスリランカの研究者と共同研究をしたそうです。疫学もなかなかおもしろいと思いました。

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