成体マウスでβ細胞を99%以上なくすと、α細胞がインスリン分泌細胞に変化する。

Conversion of adult pancreatic α-cells to β-cells after extreme β-cell loss

以下は、論文の要約です。


すい臓でインスリンを産生するβ細胞の寿命は非常に長く、生体が健康であれば、β細胞が分裂して増殖するようなことは、一生の間ほとんどおこらない。しかし(成長期での動物では)、代謝的要求が増加した場合やβ細胞が傷害されて消失した場合には、β細胞は自己複製してその細胞数を増やすとされている。

成体の動物で、糖尿病のような極度のβ細胞ロス状態の後、新しいβ細胞が再生されるかどうかは知られていない。もしも、β細胞の再生がおこる場合には、β細胞の前駆細胞からの分化あるいは、非β細胞からの分化のどちらかがおこるはずである。

本研究では、β細胞特異的ジフテリア毒素発現トランスジェニックマウスを用いて、ほぼ完全に近いβ細胞除去を行った後に、β細胞が再生することを示し、この再生β細胞の大半はα細胞由来であることを細胞系譜トレースによって示した。

β細胞除去後もインスリンを投与すれば、マウスは生存し続け、時間とともにβ細胞量は増加した。グルカゴン産生α細胞を標識して細胞系譜をトレースしたところ、再生β細胞の大半はα細胞由来であることが明らかになった。この事実によって、これまで見逃されていたすい臓細胞の可塑性があきらかになった。

このような成体内分泌系細胞の自発的転換は、試験管内での分化あるいは再生誘導によって、β細胞を産生し糖尿病を治療する目的に利用できるかもしれない。


上記の要約以外に、私がおもしろいと思ったのは、

・α細胞からβ細胞に転換した細胞は、グルカゴンとインスリンを同時に産生する(転換は不完全)。
・α細胞、β細胞、これらの前駆細胞のいずれも増殖しなかった。
・再生のスピードは遅く、インスリンが不要になるには5ヶ月近くかかった。

これまでの、同様の研究では、β細胞の再生は眠っていた前駆β細胞の増殖によると報告されていました。今回の実験で、β細胞あるいはその前駆細胞の増殖がまったく認められなかった理由に興味があります。

Morris F. White氏はNews and Viewsで、α細胞は、糖尿病患者でも障害されていないことが多いので、α細胞からβ細胞への転換を短期間でひきおこす薬物ができればすばらしいと書いています。確かにそのとおりだと思います。

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