コレステロール値が正常でもスタチンの服用がすすめられる場合

Should Healthy People With Normal Cholesterol Take Statins
Are cholesterol drugs a good idea for healthy people?

スタチン(statins)は、HMG-CoA還元酵素の働きを阻害することによって、血液中のコレステロール値を低下させる薬物の総称で、「動脈硬化のペニシリン」ともいわれます。以下は、記事の抜粋です。


血中LDLコレステロール(LDL)値が正常の人でも、心疾患を予防するためにスタチンを飲む必要があるだろうか?

2010年2月、米国FDAは、アストラゼネカのスタチン、クレストール(一般名、ロスバスタチン(rosuvastatin))を心疾患の予防に使用することを認めました。この予防的使用には、以下の条件を満たすことが必要です。

年齢:男性は50歳以上、女性は60歳以上。
CRP (C-reactive protein on the hsCRP test)が2mg/L以上。
1つ以上の心臓病リスク・ファクター(高血圧、HDL(善玉)コレステロール低値、喫煙、若年性心疾患の家族歴、のどれか)を有する。

LDLは、心疾患の重要なファクターではあるけれども、心臓発作や脳卒中を罹患する患者の約半数はLDLレベルが正常、というのがその理由です。

そこで、LDLレベルは正常だが、CRPレベルの高い患者について、クレストールの効果が調べられました。アストラゼネカがスポンサーとなった”JUPITER”と名づけられたこの臨床試験では、17,802人の被験者(高CRP(2mg/L以上)、正常LDL(130 mg/dL以下、平均108 mg/dL))を調べました。臨床試験を開始して2年後、クレストールを毎日20mg飲んだ患者に比べると、プラセボ服用群では明らかに心臓発作、脳卒中、狭心症、そして心循環器系による死亡が多かったので、臨床試験は中止になりました。

8,901人のプラセボ服用者中、心疾患が出現したのは251人、クレストール服用者では142人でした。

これらの結果を受けて、LDLレベルが正常でも上記の条件にあてはまる患者、特にCRPが高い人は、予防的クレストール服用について医師と相談すべきだという結論になりました。

他のスタチンでも同様の効果があるか?CRPは心疾患の原因となるか?健常人がスタチンを服用した時のリスクは何か?などの問題についても議論されています。


以前、Craig Venter氏が自身の全ゲノムを解読した結果、apolipoprotein E (Apo E)遺伝子の一つがE3ではなくE4だったことがわかり、アルツハイマー予防の目的でスタチンを飲んでいる、という記事を読んだことがあります(Venter氏の記事をみる)。サーチしてもみつかりませんでしたが、James D. Watson氏も同様の目的でスタチンを飲んでいるという話を読んだ記憶があります。米国のインテリの間では、予防的なスタチンの服用はよくあることのようです。

クレストールは、水溶性で肝臓に取り込まれやすいことと、CYP3A4で代謝されないことが他のスタチンと異なります。しかし、メカニズムを考えれば、より安いスタチンでも同等の心疾患予防効果があると思われます。

CRPは、プラークの不安定性やラプチャーと関係があり、CRP値が3.0mg/Lを超える場合の冠動脈疾患10年発症率は、1.0mg/L未満者の約2倍といわれています。心突然死についても同様のデータがあります。高感度CRP(hsCRP)測定が有用だと考えられています。

スタチンの副作用としては、筋肉や糖尿病などが心配されますが、心疾患だけではなくアルツハイマーも考えると、予防的スタチン服用のメリットはあると思います。

スタチンの発見者、遠藤章先生(ラスカー賞のサイトをみる

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする