糖尿病の新薬は、「2010年問題」に対応できるか?

糖尿病に飲む新薬続々、低血糖リスク減 勢力図に影響も

以下は、記事の抜粋です。


新しいメカニズムで効く糖尿病の飲み薬が約10年ぶりに相次ぎ登場している。国内外の製薬大手は新薬が出ないまま主力薬の特許が切れる「2010年問題」に直面しており、患者数が多い糖尿病での画期的新薬への期待は大きい。糖尿病薬市場のシェア争いに変化をもたらす可能性もある。

国内最大手、武田薬品工業の「ネシーナ」は、2010年度前半の発売を予定する。昨年末に国内初発売となった万有製薬「ジャヌビア」と、4月に発売予定のノバルティスファーマ「エクア」に続く3品目。いずれも「DPP-4阻害薬」と呼ばれる種類の薬である。

血糖値を下げるインスリンの分泌を促すインクレチンというホルモンがある。DPP-4はこれを分解する酵素で、新薬はこの酵素を阻害してインスリン量を増やす仕組み。従来品の投薬は低血糖にならないように微妙なさじ加減が求められたが、新薬は高血糖時にのみ働くインクレチンに着目しており、低血糖になりにくい。体重増につながる空腹感など他の副作用も少ないとされる。

この分野で新しい作用の薬は武田が1999年末に発売した「アクトス」以来。新しいメカニズムは注目度が高く、国内外の製薬大手がそれぞれ違う化合物を用いて激しく開発競争してきた。

メリルリンチ日本証券の渡辺律夫アナリストは「日本の医師らは特に安全を重視する傾向が強い。副作用の少ない新薬の売り上げ規模は5年後には各社合計で1千億円を超え、経口糖尿病薬全体の3-4割を占める可能性もある」とみる。

2千億円規模の経口糖尿病薬市場では現在、シェア半分強を握る武田が一歩抜きんでた存在だが、新薬の登場は勢力図を塗り替える可能性がありそうだ。


記事のように、これまで各社に大きな利益をもたらしてきたブロックバスター薬(blockbuster drug)の特許が2010年を中心に切れます。具体的には、武田薬品:糖尿病薬のアクトス、消化性潰瘍治療薬のタケプロンはどちらも2011年。エーザイ:アルツハイマー型認知症薬のアリセプトは2010年に、それぞれの特許が切れます。

さて、アクトス(一般名:ピオグリタゾン)は、チアゾリジンジオン誘導体(TZD)で、インスリン抵抗性を改善することで血糖低下作用を発揮するとされています。
TZDは、核内受容体型転写因子PPAR (peroxisome proliferator-activated receptor)γのリガンド結合部位にアゴニストとして作用し、遺伝子の発現を変化させます。

活性化されたPPARγは、レチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成して、DNA上のPPAR応答領域(PPRE)に結合し、アディポネクチンなどの標的遺伝子の発現を調節します。

PPARγは脂肪細胞に多く発現し、脂肪細胞の分化・成熟を制御しているので、脂肪細胞がTZDの主要な標的細胞であると考えられています。しかし、PPARγは他の臓器や細胞にも広く分布しているので、TZDには抗糖尿病作用以外にも、多様な作用があります。

一方、今回登場するDPP-4阻害薬は、インスリンの分泌を改善する薬物です。DPP-4で分解されるインクレチン(GIPとGLP-1)は、受容体に結合するとβ細胞内cAMP濃度を上昇させます。これが低分子量GTP結合タンパク質Rap1のGEF(グアニンヌクレオチド交換因子)であるEpac2を活性化し、インスリン分泌を促進します。

従来から糖尿病治療に使われているトルブタミドおよびグリベンクラミドといった一般的に使用されているSU薬は、Epac2とATP感受性カリウムイオン(KATP)チャネルの両方を活性化して、インスリン分泌を促進します。これらには後発薬もあり、安価です。

このように、DPP-4阻害薬は、「新しいメカニズムで効く」とはいうものの、抗糖尿病作用は従来のSU薬よりも劣り、治療対象を拡大するものではありません。「より安全」というだけで、アクトスのような年間売上高が4000億円に迫るブロックバスターに取って代わるのは難しいと思います。

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