ナルコレプシー患者におけるTribbles homolog 2特異抗体価の上昇

Elevated Tribbles homolog 2–specific antibody levels in narcolepsy patients

以下は、論文の要約です。


ナルコレプシー (narcolepsy) とは、日中での眠気の発作を主な症状とする睡眠障害です。強い感情にともなう情動脱力発作(カタプレキシー)を示す患者も多い(下の図を参照)。

ナルコレプシーは、hypocretin (orexin)とよばれる神経ペプチドの欠乏によっておこり、 視床下部のhypocretin産生細胞が大きく消失する。ナルコレプシーは自己免疫疾患だと思われているが、自己抗体の存在などによる決定的な証明はない。

研究者らは、トランスジェニック・マウスを使って、hypocretin産生細胞でhypocretinと共局在し、自己抗原になるようなペプチドを探した。

その結果、以前では「ぶどう膜炎」という病気で自己抗原になることが知られていた、Tribbles homolog 2 (Trib2)というタンパク質がhypocretinと共局在することがわかった。

臨床的に調べた結果、カタレプシー症状をともなうナルコレプシー患者の血清中には、他の神経疾患と比べて、Trib2と特異的に反応する抗体が多く存在することがわかった。

Trib2特異抗体は、ナルコレプシーの初期で高く、2-3年で急速に低下し、その後は正常人よりも有意に高い状態が30年ぐらいまで続く。

血中Trib2特異抗体価は、カタレプシーの重篤度とよく相関する。一人の患者から得られた血清は、マウス視床下部のhypocretinニューロンの86%と免疫反応を示した。

以上のように、研究者らはヒトにおいてナルコレプシーをひき起こす自己抗体を同定し、ナルコレプシーが自己免疫疾患であることを証明した。


研究者らは、Tribbles homolog 2以外の自己抗原が存在する可能性や自己免疫以外が原因であるナルコレプシーの存在を否定していません。

しかし、自己免疫疾患の治療に使われる免疫グロブリンを、高いTrib2抗体価を示す発症直後のナルコレプシー患者に投与したところ病気の改善がみられたので、このような患者には免疫療法が有効である可能性が高いとしています。

ナルコレプシーの患者は、病気であることの認識が乏しく、「怠け者」のレッテルを張られることも多いので、理解を得られず退職や転職を余儀なくされる人もあります(病気のサイトをみる)。

自己免疫機序が原因でナルコレプシーがおこることを証明した本研究の意義は、非常に大きいと思います。

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