「あの論文は二重の意味で衝撃だった」、自治医大・森澤氏

医療従事者サイトm3.comに掲載された、橋本佳子さん(So-net M3)によるインタビュー記事を紹介します。記事は、一部を省略、改変しています。原文をみるには、m3.comで会員登録(無料)する必要があります。


「あの論文は二重の意味で、衝撃だった。臨床医学のレベルで日本は中国にはるかに及ばないこと、またドラッグラグが深刻であり、日本のワクチン戦略が世界標準から大幅にずれていることが浮き彫りになったからだ」

こう語るのは、自治医大感染免疫学講座の森澤雄司氏。森澤氏は厚生労働省の新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会などで、専門家の立場から積極的に発言されています。

「あの論文」とは、NEJM誌に、10月21日に掲載された論文、「A Novel Influenza A(H1N1) Vaccine in Various Age Groups」(原文はこちら)。中国で2200人を対象に、新型インフルエンザワクチンの有効性や安全性を調べるために実施された、プラセボ対照のランダム化比較試験。3歳から77歳を年齢別に4群に分けて、1回接種と2回接種、アジュバンドの有無などによる抗体価の変化を調べています。研究を実施したのは、中国江蘇省をはじめとする行政機関、Southeast universityなど。ワクチンを製造したのは、中国のHualan Biological Bacterin Company。

森澤氏は次のように続けます。

「日本では200人という規模で臨床試験をやっただけ(中間結果が報告されたのは10月16日)。それに対して、中国では臨床試験の結果が既にNEJMに掲載されている。もう率直に言って、話にならない。また、従来、感染症の領域ではドラックラグはあまり問題になっていなかったが、今回の新型インフルエンザでは、急に流行が開始し、早急な対応を求められる事態になり、ドラッグラグが強く認識されるようになった。

中国で今回の試験が可能だったのは、ワクチンを海外に売ろうという意識を国策としてきちんと持っているからだ。ワクチン行政がしっかりしている。これに対して、日本ではワクチンを作っているのは小規模のメーカー。行政が企業を守り、護送船団でがんばるという発想はもうあり得ないはずなのに、まだやっている。今の状況は、そのようにしか見えない。ワクチンを作るのであれば、ワクチンを輸出するくらいの心意気、ビジョンが必要なのではないか。

そもそも国産ワクチンと輸入ワクチンを区別して考えているのは、恐らく日本だけ。この考え自体が、世界標準からもはや大幅にずれている。医療現場では「有効な薬が使用できれば良い」と考えるが、それを日本の医療現場が政策提言する余裕はない。医療崩壊するかもしれないところで政策提言は無理。そうした中での話なので、行政にはより戦略性が求められる」
森澤氏の指摘の通り、医療現場では人手不足の折、診療現場が多忙になり、臨床研究に割く時間が少なくなっているのが現状。

現実に医療機関には、新型インフルエンザの患者が多数訪れています。また今後、「優先接種対象者証明書」の発行や、実際のワクチン接種も本格化するなど、多忙さが増すばかりで、状況が改善されるメドが立っていません。


おっしゃる通りです。こんな人が厚生労働省の新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会などで、専門家の立場から積極的に発言されているのに、どうして状況は改善しないのでしょう?

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