イヌの毛の多様性とがん研究

犬の毛の多様性には3つの遺伝子が関係、米研究

以前のブログで、イヌの脚を短くすることに関係しているFGF4遺伝子についての記事を紹介しましたが、今日は毛の話を紹介します。

イヌの毛の多様性は、3つの遺伝子によって決定されるとする研究結果が、8月27日のScience電子版に発表されました。報告によると、毛の多様性には3つの遺伝子、RSPO2、FGF5、KRT71、の変異が関係しています。

毛がごわごわして口ひげと眉毛をもつスコッチテリアなどは、RSPO2遺伝子に変異があります。RSPO2遺伝子にコードされるR-spondin-2は、R-spondinファミリー成長因子の一つです。R-spondinファミリー成長因子は、特定の細胞から分泌されるタンパク質で、Wnt/β-cateninシグナルを活性化して、初期胚の形成や細胞増殖などの生命現象に関係すると考えられています。

Wnt/β-cateninシグナルは、家族性大腸腺腫症における大腸がんの発生など、発がんと強く関係していますので、R-spondinファミリー成長因子もがんや胚発生との関連で盛んに研究されています。毛の長いコリーなどは、FGF5遺伝子に変異があります。FGF5は、その変異が細胞のがん化をひき起こすがん遺伝子として発見されました。FGF5遺伝子にコードされるFibroblast growth factor 5も細胞増殖や胚発生で重要な働きをする成長因子と考えられています。

面白いことに、マウスでFGF5遺伝子をノックアウトすると、イヌと同様に毛が長くなるそうで、毛の成長に対してはインヒビターとして働いているようです。

ケラチン(keratin)は、上皮細胞の中間径フィラメントを構成する細胞骨格タンパク質です。毛、爪などの角質組織では、上皮細胞はケラチンから成る中間径フィラメントで満たされた後、死んで硬化します。ケラチンには、異なる遺伝子によってコードされる非常に多くの種類があります。KRT71もケラチンをコードする遺伝子の1つで、変異があると毛がカールするそうです。
日本犬のように口ひげもなく、毛が短くカールしていないものは、これら3つの遺伝子すべてが野生型だそうです。一方、Bichon Frisé(ビションフリーゼ)とよばれる品種では、3つの遺伝子すべてが変異しているそうです。

上記のような遺伝子変異の存在が明らかになったので、動物保護団体がどう考えるかは別として、テリアやコリーなどは、がん研究の貴重な材料になるかもしれません。実際、テリアなどでは毛嚢由来の腫瘍が多いそうです。

これらの一連のイヌの研究をみて思ったのですが、チワワとセントバーナードの比較で個体のサイズを決める遺伝子、土佐犬とスピッツの比較で臆病さを決める遺伝子などが決まると面白いですね。楽しみに待っています。

下の動画は、Bichon Friséです。


今日から、職場復帰します。

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