抗血小板薬「クロピドクレル」(商品名:プラビックス)

「人の体の構造は、急に変るものではないから、学生の時に学んだ解剖学の知識は、将来もそのまま役立つと思います。しかし、薬物については、どんどん変るので、いつも新しい知識を学ぶ姿勢が重要です。」と講義してきました。

しかし、私自身がこのような姿勢を持っていたかどうかは怪しく、良く知らなかった薬物がたくさんあります。そういう薬物の1つ、クロピドクレル(プラビックス)を紹介します。

クロピドクレル(プラビックス)は、日本では、2006年に抗血小板薬として承認・発売されました。フランスに本社があるサノフィ・アベンティスが製造・販売しています。2007年の売り上げは8325百万ドル(約8300億円)で、 世界の大型医薬品売上ランキングでは、アトルバスタチン(商品名:リピトール)に次いで第2位です。

心筋梗塞や脳梗塞など、血管が詰まることによっておこる病気では、血管の中で血栓という血液の小さなかたまりができることが引き金になります。血栓形成には、血小板という1-4ミクロンの小さな血球成分が周囲からの刺激に反応して、凝集し、その中身を放出することが重要です。
血小板凝集によって放出されるアデノシン2リン酸(ADP)という物質は、それ自身が血小板の凝集をひき起こします。つまり、一度ADPが放出されると、放出されたADPが他の血小板に働くので凝集が加速度的に進みます。

ADPは、血小板の細胞膜にあるP2Y12という受容体に結合し、細胞内でのcAMP量を減らしたり、PI3Kというリン酸化酵素を活性化したりすることで血小板を凝集させるらしい。

クロピドクレルは、P2Y12受容体に不可逆的に結合します。その結果、ADPがP2Y12受容体に結合しにくくなり、血小板の凝集が抑制され、血栓の形成が抑制されると考えられています。

同じメカニズムの薬物で、類似の構造を持つチクロピジン(商品名:パナルジン)が先行していましたが、クロピドクレルの副作用や薬物相互作用がより少ないということで逆転されました。

アスピリンとはメカニズムが異なるため、単純に効果を比較する事は意味がないかもしれませんが、臨床試験の結果では、クロピドクレルを飲んでいた人のほうが、心血管系の病気の発症割合が約9%少ないという結果でした。

海外では脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患の既往があるアテローム血栓症の再発予防に広く承認されていますが、日本での適応症は現在のところ、脳梗塞と経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群です。