ドパミン受容体

約30年前に研究を始めたとき、ドパミンという神経伝達物質に興味を持ちました。

パーキンソン病のモデルマウスに新しいドパミン様薬物を投与して、まったく動かなかったマウスが走り回るのを見て感激したのを思い出します。

臨床は、精神科をやっていました。統合失調症という病気の患者さんが最も多かったです。治療薬としては、ドパミンが受容体に結合するのを阻害する薬物が中心で、これはメジャートランキライザー(強力精神安定薬、major tranquilizer)とか抗精神病薬とかよばれていました。

ドパミン受容体阻害薬により、症状は改善されるので、私はそのドパミン受容体を研究することにしました。受容体がタンパク質であることはわかっていましたが、その構造や遺伝子は不明でした。ドパミン受容体のことがわかれば統合失調症の治療は改善すると考えたのです。

ドパミン受容体を細胞膜から分離する方法と、コバルト60から出るガンマ線を照射して、ドパミン受容体の分子サイズを測定するという論文が僕の博士論文です。しかし、1984年からの留学をきっかけに、ドパミン受容体の研究は中止しました。ちなみに、このブログのタイトルにあるtakというのは留学した時に、Ferid Muradという人からつけられたニックネームです。

あれから30年、ドパミンに関する神経生物学や脳科学の研究は非常に発展しました。ドパミン受容体の遺伝子もすべて同定され、統合失調症の患者さんでの遺伝子多型の研究なども行われました。

今日は、家の近くの大学で中枢神経作用薬についての「処方解析学特論演習」というのをやってきました。実際に使われる薬物や文献を見ても、統合失調症の薬物治療は、ほとんど変っていないようです(文献)。ドパミン受容体のことがわかれば統合失調症の治療は変るという私の予想は、誤りだったようです。